COLUMN

お客様は神様?飲食業界に蔓延るクレームとハラスメント

 

昨夜、ヤフーニュースのトップにこんなニュースが上がってきた。

 Yahoo!ニュース 
「行けやボケ」客から暴言など…サービス業の7割が経験(朝日新聞デジタル) - Yah...
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180911-00000066-asahi-bus_all
外食やタクシー、ホテルといったサービス業で働く人の約7割が、客から暴言などの迷惑 - Yahoo!ニュース(朝日新聞デジタル)

産業別労働組合「UAゼンセン」の調査によると、外食産業を含むサービス業に従事している人の約7割が、暴言や威嚇といった客からの迷惑行為を経験したことがあるのだという。

すっかりクレーム文化が根付いてしまった日本では、現場での直接的なクレームはもちろん、最近ではTwitterやFacebookなどのソーシャルメディア上でのクレームも目立つようになった。従来は客と従業員、あるいは企業間で処理されていたものが、ソーシャルメディアでシェアされることにより全世界に急速的に拡散してしまい、一件のクレームが店舗や企業にとって命取りになるケースも少なくない。

クレームと迷惑行為の境目は?

私が飲食店で働いていた時も客からのクレームやハラスメントに遭遇することは多々あった。ある程度忙しい店の場合、頼んだ料理が来ないとか店員がオーダーを取りに来ないといった小さなクレームは飲食店にとっては日常茶飯事だし、店側も迷惑行為と感じることはないのだが、店員にとってクレームが迷惑行為に変わってしまう大きな原因は ”要求側の態度” である。

大学時代にアルバイトをしていた都内の居酒屋は、駅前という好立地もあって週末は常に満席というような繁盛店だったので、スピード勝負の大衆居酒屋では料理提供の遅さについてのクレームを受けることが多かった。大半の客は語気を強めるようなことはなく、あくまで注文したオーダーの準備が進んでいるかという確認のスタンスで対応してくれるのだが、一部の客は逆上してしまい、怒鳴られたりおしぼりを投げられたりされることもあった。特にお酒が入るとタチが悪い。

酔っ払った客から手を握られたり、言葉によるセクハラ行為も何度かあったがこんなものは論外だし、セクハラはまた別問題なので今回は割愛する。

”お客様は神様”という言葉の大罪

なぜ日本はこんなクレーム大国になってしまったのか?

飲食店に限らず消費者と供給者の関係を表す時に用いられるのが”お客様は神様”というフレーズだろう。一度でもサービス業に従事したことのある人間だったら耳にタコができるくらい聞かされたはずだ。英語では“The customer is always right.(お客様は常に正しい)”と表現するのだが、「顧客が常に最優先であり、彼らのニーズを満たすためには最善を尽くせ」というあくまで生産者側のモットーであり、顧客側が用いる言葉でもなければましてや顧客を神格化しているわけでもない。

日本では”お客様は神様”という言葉だけが一人歩きし、顧客の都合の良いようにその意味合いが歪曲され、消費者達を洗脳しているのである。

日本が誇る高水準のサービスが生み出す悲劇

日本のサービス業のレベルが世界トップクラスなのはご存知だろう。

バカラのグラスでシャンパンを嗜みながらフレンチ料理を味わうような高級店で一流のサービスが受けられるのは万国共通だが、コンビニで100円のおにぎりを買おうがファストフード店で500円のランチセットを買おうが、常に徹底した顧客対応を受けられるのが日本のスタンダードなのだ。

我々日本人は物心ついた時から高水準のサービスに囲まれて育つため、サービスに対する期待値が自然と高くなっている。注文の品が早く出てきて当たり前、店員の愛想が良くて当たり前。大衆居酒屋だろうが三つ星レストランだろうが、そんな感覚が無意識のうちに染み付いてしまっているのである。

チップ制度がフェアな理由

アメリカの飲食店でも例外なくクレームは付き物だが、それでもアメリカのサービス業が消費者と供給者ともにフェアなのはチップ制度のおかげだ。

チップ制度を採用している飲食店では、州によって定められた最低賃金にプラスしてチップが配当される。カフェやファストフード店を除いて、店員が席案内から会計までを担当するようなレストランでは店のレベルや店舗の規模に関係なくほとんどの店がチップ制度を導入している。

チップ率は顧客が自身の満足度によってジャッジするため顧客の満足度とチップ率は比例するし、週末などの繁忙期で客足が増えれば忙しさとチップの量も当然比例する。日本の飲食店でウエイトレスをしていた頃は自分も不満に感じていたが、日本の給与体系では忙しかろうが客に怒鳴られようが給料は変わらないし、飲食店がブラック企業と言われる所以もここにあるだろう。このチップ制度が幸いして、アメリカのレストランで粗悪なサービスを受けることは実は結構少ない(日本人の常識では考えられないような勤務態度の店員に仰天することもたまにあるが)。

”お客様を幸せに”なんていうスローガンはただの運営側の美徳で、一部のボランティア的な飲食店は除いて店を事業として成り立たせる以上は少しでも回転率を上げて売上向上を図ることが前提だし、アルバイトなんかは自分の生活費を稼ぐことにしか興味がないので店への貢献なんて考えていないことが殆どだ。チップ制度の場合は良くも悪くも自分の稼ぎに影響するので従業員のサービス意識も自然と上がるし、回転率を上げようと努力する

現在の日本の飲食店における給与体系では割に合わない過剰なサービス提供と労働環境を従業員が強いられることが多く、給料との対価が明らかに見合っていない。今後悪質なクレーマーが淘汰されていくとは到底考えにくいので、飲食店=ブラック企業というイメージから脱却するためにも運営側は従業員を安全面と経済面でバックアップするような仕組みを構築していかなければならない。

「Uber」に学ぶサービス業のヒント

アメリカの大手配車アプリ「Uber(ウーバー)」は乗車後に乗客とドライバーがお互いに評価付けするシステムを導入している。低評価をつけた相手とは以降マッチングされず、ドライバー側もレートが低い顧客の乗車を拒否する権利を持っている。

顧客優先のサービス業ではどうしても顧客の意見が反映されやすく従業員の立場が弱くなりがちだが、乗客だけでなくドライバーも評価に参加することで評価が一方的にならない。顧客に自分自身も評価の対象であるという意識を持たせることで顧客が理不尽な行動をとるリスクを大幅に削減することができる。

顧客と供給者双方による評価システムはサービス業において革新的だった。Uberのように一方的な顧客目線を解消するやり方は、サービス業のクレーム問題を解決する大きな手がかりになるはずだ。飲食業従事者の労働環境向上のために、日本の飲食業界でも今後上手く応用していってほしい。

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